「Q&A」お念仏は何回となえれば良いのでしょうか?

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答え

 私の祖母は『ねてもさめてもへだてなく』の文字通り「お念仏」を口癖のようにしていた人で、御飯を食べても「ナンマンダブ」トイレに行っても風呂に入っても「ナンマンダブ」祖母のいる拙寺は本堂・庫裏を問わず何処へ行っても「お念仏」が溢れていました。幼少の頃、近所で遊んでいる友人たちが道往く祖母を見て「ナンマンダブが歩いて来た」と揶揄したほどでした。

そんな祖母のおかげか孫である私も物心がつく頃から毎日毎度と事あるごとに「御本尊」の前に座って手を合わせ「お念仏」していましたが、小学生になり段々と腰が落ち着かなくなると「もっと心静かに十回は、お念仏しなさい」と苦言されてばかりでした。如何に叱られても子供のことです義理か厄介のような「お念仏」はなかなか直りません。祖母の言う十回が長くて仕方がなかったのを覚えています。

考えてみれば祖母との間には、何時も「お念仏」がありました。本当は祖母の「ナンマンダブ」の声しか覚えていないかもしれません。自分の耳に残る祖母の「お念仏」の響きだけが、その面影を辿られる道標になっているように思います。

御経には『乃至十念』とか『乃至一念』というお言葉で我われを導かれてます。それは「お念仏」は称える回数ではなく「聞く」心が肝要であることの御教えなのだと思います。『たもちやすく、となえやすき名号』の響きによって自分の賜っていた広い背景に気づかされ自身の深い歴史に出遇っていくのでしょう。

(第13組  道徳寺  入江  賀彦)